テント場今昔物語
かつて鳳凰小屋のテント場は戦場だった。
平日は空いているのだが、晴れた週末ともなると早いもの勝ちの争奪戦となった。
2018年当時の私はテン場係りを任されており、主な業務は次の通りだった。
・テントの型式を聞き入り口方向を確認し、動線を確保して張り場所を指定する
・自立式テントのペグダウンとガイドライン/前室設営の禁止を告知する
・3人3張り等のパーティーへはテントの集約をお願いする
兎にも角にも、いかに詰め込むかを考えて行動することが、私へ押し付け・・・いや、与えられた任務だった。
求められたのは、動線確保のため登山靴の幅だけを残す、区画整理という名の究極のパズルゲームだったのである。
忘れもしない2018年の「スポーツの日」は、13時30分で早くも満員御礼となった。
それ以降は小屋への素泊まりをお願いするのだが、了承いただけない場合にはテント場外で組み立ててもらい、僅かな隙間に落とし入れて設営済の幕を微調整してねじ込んだ。
いつでも移動できるよう、ペグダウンを禁止していたのはこのためだった。
それでも14時前で張れないだなんて夢にも思っていなかったであろう登山者達がこの後も続々と登ってきた。
そのたびに素泊まりをお願いしたり、納得ゆくまで隙間を探してもらったりと、心のすり減る業務が夕食時まで続いていた・・・。
【かつての戦場写真】
たぶん日本一、いや世界一、高密度だったに違い無い。
最大65張り詰め込んだ記憶がある。
こんな時のお客様からは、理不尽・・・、いや、大変ありがたい至極ご尤もなお言葉の数々を頂戴することになる。
それら金言の一部をオブラートに包んでご紹介させていただきます。
『チッ。』
『重たい荷物を担いで来たのになんで張れないんだ。』
『テン場を広げてくれ。』
『雨が降りそうなのに前室無しでどうやって調理するんだ。』
『ガイドライン張ってる人がいるから注意してくれ。』
『金が無いから素泊まり料なんて払えない。』
『足引っ掛けられてツエルトが倒壊したから張り直してほしい。』
『テントの張り方がわからない。』
※値札の付いた新品でした
おっしゃる通りでございます・・・。
今でも時々夢にみます。
【現在のテント場(トップシーズンの様子)】
そして2022年、鳳凰小屋のテン場が生まれ変わりました!!
土曜日と混雑の予想される特定日を予約制としたのです。
新たに複数のベンチが設置され、フラットで水はけの良い、森の中の静かで快適なテント場だと胸を張って言えるようになりました!!
ほぼ指定無しで張って頂いておりますが、写真の通りお客様同士で調整されてバッチリ動線が確保されています。
テント場係りの任は今年でぶん投げ・・・いや、返上いたします!!
さて、それでも予約が必要であることを知らずにおいでになる方が、今でも一定数いらっしゃいます。
やむを得ずお客様の予約をお断りしている週末などもございますので、指定日に予約の無い方の受付けには対応致しかねます。
その場合は例外なく小屋へ素泊まりしていただきますので、予めご了承いただきますようお願い申し上げます。
詳細は鳳凰小屋ホームページを御覧ください。
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