アコンカグア12日目NO.1~アタック開始~

(写真)前々日の2月11日。BCムーラスから見た夕焼けのアコンカグア。これ以上ないほど紅く染まる山肌。それをなぞるように不思議な雲がたなびいた。
《2月13日 C2ニド→C3ベルリン》
アコンカグアの山頂を踏むため、あらゆる想定をしてきたつもりだ。出発時間、通過時間の目安、装備、体調がこうなったら、天気がこうだったら…。
しかし、現実はしばしば想定を超えてくるものである。記念すべきアコンカグアのアタック日の午前1時過ぎ。ぼくは中国マフィアに銃で撃たれる夢とともに目を覚ました。
…ふだん夢をほとんど見ないのに、今日に限ってずいぶんと鮮明な夢だ。衝撃の結末の余韻にしばらく言葉もない。
かたや隣に目をやれば、とっきーくんがすやすやと幸せそうに寝息を立てている。夢の世界と対極にある平和な様子を見て、思わず笑みがこぼれた。
しばらくすると、とっきーくんも起き出し準備開始。出発予定は3:00だったが、風が強いので3:30に遅らせることにした。
アコンカグアでは風が強い場合、あまり早く出発してはいけない。寒さと風で体力を削られてしまうからである。
日の出は7:30頃だが、山頂に遮られるため、陽が当たって暖かくなるのは9:00過ぎ。
それまでに体力を失い過ぎると、「インデペンデンシア小屋(6,380m)~大トラバース~グランカナレータ(6,650m~)」の高所のどこかで突然疲労に襲われ力尽きることになる。挽回は極めて難しい。それだけに慎重に歩く必要のある時間帯だ。
風は依然として強かったが、3:30になったので二人でテントを出た。予報もよかったし、そろそろ風が止むような気もしていた。
とっきーくんは順調に進んでいく。自分は靴が合わず不調のスタート。出発直前になって靴下の枚数を減らしたことと、登りに備えて靴ひもを緩め過ぎたことがいけなかった。一歩一歩に不快感がある。
1時間半ほど歩いたところで、ついに我慢できなくなり、風を避けられる岩陰で直すことにした。とっきーくんには先行してもらう。
この頃にはだいぶ風が収まって来ていて、極地用の厚手手袋を外して作業することができた。靴下を2枚重ねにし、二重靴の靴ひもを全部締め直す。これでよし。
だが、厚手の手袋は本来外すことができないものだ。もっと気温が低いか風が強ければ、こんな作業はできない。反省。
ともかくいつもの調子が戻った。とっきーくんに追いつくため、つづら折りにつけられたトレース(足跡)を無視して、まっすぐ直登する。
6:00ごろ、C3ベルリンでとっきーくんと合流。避難小屋が空いていたので使わせてもらう。中は5~6人がやっと座れるほどの小さな小屋だ。
凍らぬよう懐(ふところ)で暖めておいた赤飯を取り出し食べる。塩味が効いて、腹持ちもよく、縁起もよく?おいしい。ぼくが信頼を置く山めしの一つだ。
二人で「ここまでいいペースだね」という話をする。本当に順調すぎるくらいだった。
が、順調な時こそ危ないもの。ここで食べた赤飯とベルリン小屋への直登が後に自分を苦しめることになった。
アオト