鳳凰小屋と『ありがとう。』
私は山とは無縁の仕事に就いている、週末だけのお手伝いスタッフだ。
平日は在宅勤務が増え、すっかり生で人と接する機会が減ってしまったが、コロナ渦前にはそれなりの規模の会社で、多くの人と接する日々を送っていた。
小さな鳳凰小屋で働いていると、ふと思うのだ。30年近い会社員人生の中で、こんなにも『ありがとう。』と言ってもらったり、感謝の気持ちを相手に伝えた事はあっただろうかと。
掃除をすれば『ありがとう。』
洗い物をすれば『ありがとう。』
言われ慣れていないものだから最初は正直戸惑った。『え、こんなことくらいで?』『仕事なんだから当然だよね。』そんな風に生きてきた私には、初めはなんと返して良いのかわからなかった。
しかし最近になり、ようやく『ありがとう。』と言われることを素直に受け止め、それが次の行動への原動力となっていることに気がついた。そして今では、心からの『ありがとう。ご苦労さま。』が、自分の言葉として出せるようにもなっていた。
いい言葉だなと思う。
使わなきゃもったいない。
今日あなたは、誰かに『ありがとう。』と言いましたか?
だから私はまた鳳凰小屋に行く。
なかなか『ありがとう。』を言葉にしない、不器用なあの方に会うためにw
写真:チーフ
文 :小池